【はじめに】
秋田県の人口減少に歯止めがかからない、というニュースはよく聞きます。
「消滅可能性都市」として選ばれた秋田県。
「大潟村を除いた24市町村に消滅の恐れ」「日本から秋田県がなくなるかも」というニュースはとてもショッキングですが、この記事では、その要因や対策について考えたいと思います。
【秋田県の人口の推移】
日本全体の人口の推移を見てみると、2024年(令和6年)1月における日本の総人口は1億2409万人ですが、総人口は2006年に1億2,774万人でピークに達した後、以後長期の人口減少が続いています。
下のグラフは、秋田県の人口の推移を表したものです。
(秋田県「秋田県人口ビジョン–本県人口の推移」より)
秋田県の人口はこれまで一貫して増加してきましたが、1956年(昭和31年)の約135万人をピークに減少に転じました。
一時持ち直した年もありましたが再び減少し、2024年(令和6年)の現在は約90万人です。
2020年(令和2年)の時は約96万人なので、4年間で6万人も減少したことになりますね。
人口の変動要因は大きく分類すると、自然動態の「出生」と「死亡」、そして社会動態の「移動」の3つの要素に分けることができますが、秋田県の減少の内容を見てみましょう。
1993年(平成5年)に自然減が始まり、1999年(平成11年)には出生と死亡の差がマイナスとなる自然減が、転出と転入の差がマイナスとなる社会減を上回り、それ以降、自然減は急速に拡大していきました。
従来からの転入・転出の社会動態による減少が拡大したことに加えて、「出生」・「死亡」の自然動態による減少が急速に拡大したためと、と考えられています。
国立社会保障・人口問題研究所が行った「日本の地域別将来推計人口(平成30年3月推計)」によると、今から21年後の2045年(令和27年)の秋田県の人口の予想は約60万2千人、更に今から41年後の2065年(令和47年)には約36万2千人の予想となっています。
確かに、このようなデータや予想を見ると、数十年後には秋田県はなくなってしまうのかも…というのは、誇張でもないのかな、と感じてしまいます。
【秋田県高校卒業生の県内定着状況】
秋田県の年齢構造で大きく気がかりなことは、子どもを産み育てていく中心的な世代となる20~39歳の年齢層が、とても少ないことです。
秋田県では特に若年層の人口流出が進んでいますが、下の図を見てみましょう。
(秋田県「秋田県人口ビジョン–本県高校卒業生の県内定着状況」より)
大学進学者のうち、約3割が県内へ進学し、残りの約7割が県外へ進学しています。
県内大学への進学後、約6割の卒業生が秋田県への就職し、残りの4割の卒業生が県外へ就職しています。
また、県外大学へ進学後に、約3割が秋田県へ戻って就職をしています。残りの7割はそのまま県外へ就職したようです。
高校を卒業後、進学せずに高卒で就職した者のうち、6割以上が県内に就職し、残りの4割が県外へ就職しています。
特に高卒での就職は、「初めての仕事」で「初めての一人暮らし」はとてもハードルが高いようで「やはり自宅から通えるところを選ぶ生徒が多い」との話は高校の就職指導担当の先生方からよく聞きます。
また、自宅から通えないところの企業を選ぶときには、「独身寮」や「アパートの借上げ」のある企業が高校生には魅力的に映るようです。
【秋田県の人口減少が進む、考えられる要因】
秋田県は、特に20~39歳の人口が少ないため、出生数の減少が進み、それにより急速な労働力人口が減少し、更には高齢化が進む、という結果に至っています。
ここで、秋田県の人口減少の、考えられる要因について見ていきましょう。
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戦後から続く社会減
秋田県の、年齢別の人口流動状況を見ると、特に18歳から23歳までの年齢層の県外への転出が突出しています。
これは、高校卒業後の就職や、大学・短大・専門学校などへの進学が挙げられます。
また大学や短大を卒業した後の就職などによる転出も考えられ、多くの若年者が東京圏や仙台市を中心とした東北エリアに転出していると思われます。
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平成5年から続く自然減
1971年(昭和46年)から1974年(昭和49年)の、第2次ベビーブームが全国的におこりましたが、この時期の秋田県の出生数は、わずかな増加傾向のみで、爆発的には増えませんでした。
高度経済成長期に、多くの若者が県外へ流出したことなどが影響していると考えられます。
また、全国的にも言えますが、若者の結婚・出産に対する意識の変化などにより、平均初婚年齢や未婚率が上昇しています。
また、それに伴って晩産化が進み、出生率が減少しています。
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東京圏との賃金水準の格差
全国的に、賃金水準と社会動態には相関関係があると見られています。
賃金水準が高い地域ほど社会増となり、賃金水準が低い地域ほど社会減となる傾向にあるのです。
秋田県の賃金水準を見てみると、ご存じの通り、全国で下位に位置しています。
令和5年10月1日から最低賃金が44円アップし、897円になりました。これは、全国的にも最大のアップ率です。
ですが、全国的な順位で見ると、愛媛県、高知県、宮崎県、鹿児島県と並んで、47都道府県中、40位タイです。
特に「東京圏と賃金水準の格差があること」が、若年層を中心とする人材が東京圏へ転出する大きな要因となっていると考えられます。
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大学・短期大学への進学
1955年(昭和30年)に17.3%だった大学・短期大学への進学率は、2022年(令和4年)には49.2%となりました。もうすぐ50%に達しそうです。男女の内訳を見ると、男子が46.6%、女子が51.9%の進学率となっています。
2020年(令和2年)のデータでは、秋田県の高校生で大学・短大への進学者のうち、県内大学・短大への進学は3割程度に留まり、残りの7割は県外の大学・短大へ進学しています。
大都市と異なり秋田県では、学びたい専門分野や卒業後の進路などの多様なニーズを満たす大学や短大を揃えることは難しいです。
例えば、いわゆるマンモス大学を秋田県内に複数新設するのは、現実的ではないように思います。
今県内にある大学は、規模もそんなに大きくなく、収容定員も少ないことから、他県からの学生の受け入れにも限界があります。
このように、学びたい専門分野や卒業後の進路などを考えて県外大学へ進学する若年層が年々増えていることが、県外への転出が多くなっている要因の一つとなっています。
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女性の就業
女性の25歳から65歳までの就業率は、着実に年々上昇しています。
自分の希望や条件に適合した職場を求めて県外に目を向けるようになったことも、社会減に結び付いています。
これは、転出による社会減にとどまらず、若い女性が県内に少なくなったことで出生数の減少にもつながり、自然減にも影響が出ています。
秋田県内に女性が活躍できる環境整備を図りながら、若い女性の県内定着や県外への進学を経て秋田に戻ってくることについても、しっかりと対策を取っていく必要があります。
【対策を考える】
それでは、若者が秋田県に定着するようには、どのようにすればいいのでしょうか。
考えられる要因5つの中の、「①戦後からの社会減」と「②平成5年から続く自然減」、そして「④大学・短期大学への進学」については、すぐに対策を、と見るのは難しいような気がします。
ですが、残りの2つ「③東京圏との賃金水準の格差」「⑤女性の就業」はどちらも秋田県での仕事に関することであり、根は同じように感じます。
そして、その課題が解消されれば、「①戦後からの社会減」にも少し良い影響が出てくるのではないでしょうか?
このことが県もよくわかっているからこそ、企業を誘致するなど、この課題に懸命に取り組んでいるのではないでしょうか。
つまり、若者に「県外や東京圏に就職するよりも、秋田県で就職した方が魅力的だ」と思ってもらえるようにしなければなりません。
ちなみに、「就職応援本COURSE秋田2023」の高校生読者アンケートでは、質問「会社選びで重視するポイントは?」の回答が以下の通りです。
堂々の1位が「給与・手当等」となっていますね。
それと同じくらいの高ポイントで「休日・休暇」「仕事内容」「職場の雰囲気」が挙げられているのがわかります。
生活費等の物価水準も違うので一概には言えませんが、とりあえず「③東京圏との賃金水準の格差」については、真剣に考えたほうが良さそうです。
何よりも、来年就職活動をしようとする高校2年生の意見が、はっきりと「給与・手当等は、企業を選ぶときに重要です」と告げています。
特に、今は学生でも一人一台スマートフォンを持っているのが当たり前の、情報時代です。
情報を制限したいと思っても、簡単に調べることのできる時代なのです。
同じような企業を見比べたときに、条件が良い方に行きたくなるのは、当然かもしれません。
このまま東京圏との賃金水準の格差が広がったままでは、どんどん秋田県から若手人材は出て行ってしまいます。
「給料を上げる」、それがどんなに大変なことかも、わかります。
ですが、若者に選ばれる、魅力ある企業になるために、官民一体となって対策をしていきましょう。
【他県の大学に進学した後、秋田県に戻ってきた若手社員インタビュー】
ここで、秋田から他県の大学に進学し、卒業してから秋田県に戻ってきた若手社員のリアルな声を紹介します。
Tさんは、秋田県に生まれ育ち、18歳の高校卒業と同時に他県へ大学進学をし、就職先にまた地元の秋田を選び、今は秋田の企業で元気に活躍しています。
県外の大学に進学後、そのまま他県で就職する若者も多い中、秋田県で就職しようと思った気持ちについて、聞いてみました。
サポートナビ
県外の大学に進学して、そのまま県外に就職しようとは考えなかったのですか?
Tさん
都会も遊ぶには楽しそうだと思ったけれど、実際に都会に住んで、そこで自分がやっていく自信はなかったです。満員通勤電車に乗るのも嫌でしたし…。
秋田だと、高校までの18年間住んでいた、っていう安心感もありました。
もちろん土地勘もあるし、知っている会社ももちろんあるし、友だちもいますからね。
サポートナビ
家族に「できれば帰ってきて、県内に就職してほしいなぁ」なんてことを言われませんでしたか?
Tさん
うーん(笑)
親の、「近くにいてくれればうれしい」という声は実際ありましたね。
でも、それは別に決め手ではないですよ(笑)
サポートナビ
では、秋田県に就職する決め手になったのは、何ですか?
Tさん
私の時はちょっと特殊で、コロナ禍での就職活動だったんです。
なので、本来希望していた旅行業という仕事自体がコロナ禍のために一切ダメで。
書類で不採用とか普通でした。仕事自体がなくて。
同級生たちも、みんな第1、第2希望は全然内定もらえなくて。そういう話を聞くたびにどんどんメンタル低下に陥ったりしていましたね。
後ろ向きの気持ちだけで決めたわけではないけれど、コロナ禍の時代背景も込みで、地元の秋田県を選んだ、という感じです。
サポートナビ
では、秋田県に就職して数年がたったかと思いますが、今の気持ちはどうですか?
Tさん
秋田では今、当初希望していた仕事に触れるような仕事に就くことができました。
結果的に今の仕事は、天職かな、って思ってます!
あと、秋田でも意外と遊べるじゃん?って気持ちもあります(笑)
カラオケとかだけじゃない、楽しいことの幅も広がりましたよ。
高校のクラスメイトと、今でもすごく仲良いんですが、月に1回位の割合で、会って食事したり飲んだりしています。
大学の友だちも県外にいますが、そこに遊びに行く楽しみもあります。
サポートナビ
これからも活躍を期待しています。
ありがとうございました!
【まとめ】
いかがでしたか。
秋田県が数十年後には、日本からなくなる、というニュースを聞いた時は「まさか」と笑ったこともありました。
ですが、さまざまなデータを見たときに、ありえないことではないのかも、との気持ちも出てきました。
秋田県内の高齢化が進み、後継者のいない企業の話や、人手不足で仕事がまわらない、という話もよく聞きます。
他県に仕事を求めて若者が出て行ってしまうのが大きな原因の一つならば、やはり対策をしっかりと考えないといけません。
若者にとって魅力ある企業となり、選ばれる企業になりましょう。
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