【インターンシップとは】
皆さんの会社では、学生に向けてインターンシップ制度を行っていますか?
インターンシップは、もともと職業訓練プログラムとしてアメリカで考案されたのが始まりといわれています。日本ではバブル経済の崩壊によって長期化しつつあった就職氷河期の中で、学生と企業を結びつける意図をもって文部省などによって推進されました。
アメリカやヨーロッパではインターンシップと採用は密接に結びついていますが、日本では学業優先の立場から採用とインターンシップを結びつけるべきではない、という意見が根強いです。
【インターンシップの目的とそのメリット・デメリット】
学生へのインターンシップ、と一言で言っても、高校生と大学生のインターンシップではだいぶ異なります。
高校生のインターンシップの目的は、「職業観・勤労観の形成と確立」「将来進む可能性のある仕事や職業に関連する活動を試行的に体験すること」「体験を手掛かりに社会・職業への移行準備を行うこと」にあります。そのため、高校生のインターンシップは必ずしも採用に結びつかない、というのが現状です。
大学生等におけるインターンシップ制度の目的は、「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと」です。
学生にとっては、「大学で学んだものと社会での実地の体験を結び付けることができる」「新しい経験を積むことで、学習意欲を喚起」「主体的に職業選択をすることができる」「就職後の職場への適応力や定着率の向上」などのメリットがあげられます。
また、学生を受け入れる企業にとっては、「企業等に対する理解の促進」「企業の魅力発信」「就業希望の促進」「若手人材の育成」「企業等以外の人材による新たな視点等の活用」「実践的な人材の育成」などをメリットに挙げることができます。
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選択肢 |
期間 |
給与 |
企業規模 |
業務レベル |
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高校生 |
高校側が決めた企業から選ぶ |
短期 |
無給 |
地元中小企業 |
簡単 |
大学生 |
自分で選ぶ |
短~長期 |
有給のものもある |
中堅・大手企業 |
困難 |
企業側のメリットがわかっても、実際にインターンシップを自社で行う、となるとなんだか大変そう…。
そう、それこそがデメリットです。やっぱり大変ですよね。
でも、そんなインターンシップ初心者へ、自社でインターンシップを行う時の段取りや準備などの進め方を伝授します。
【インターンシップの進め方】
①インターンシップの目的を決めよう
まずは、インターンシップの目的を決めましょう。目的をきちんと考えずにただ学生を募集しても、学生にもその無計画さなどが伝わってしまい、インターンシップの成果を求めるどころの話ではなくなってしまいます。
目的としては以下の4つが主にあげられます。
- 優秀な人材を早いうちに見つけて、接点をもちたい
- 自社への志望の気持ちを強めて欲しい
- 採用選考でのミスマッチを早いうちから防止したい
- 業務を早く理解してもらい、入社後の即戦力にしたい
就職活動への意欲が強い学生は、より速く就活を始める傾向にあり、採用活動も早くに始める必要に迫られています。就職活動が本格化する前からインターンシップという形で学生と接点をもつことで、優秀な人材に自社をアピールし、引いては採用できる可能性が強まります。
また、学生はインターンシップへの参加経験の満足度や、業務の理解を深めビジネスマナーを学習することで、選考プロセスへの志望度アップにつながります。そして入社後早期に活躍してもらうことも期待できるでしょう。
②インターンシップの内容を決めよう
一口にインターンシップといっても内容は様々ですが、大きくこの5パターンに分けることができます。自社に合ったインターンシップの仕方を取り入れましょう。
- グループディスカッション(グループワーク)
- ロールプレイング(疑似体験)
- ビジネスゲーム
- 就業型
- 講義・レクチャー
1.グループディスカッション(グループワーク)
参加者をグループに分けて、実際の業務に即した共通の課題に対する解決策などを話し合い、プレゼンテーションを行う方法です。学生の考え方や適性、コミュニケーション能力などを見ることができます。
2.ロールプレイング(疑似体験)
営業場面や接客場面などのシチュエーションを疑似体験し、職場の雰囲気を理解する方法です。学生の判断力、応用力を見ることができます。
3.ビジネスゲーム
既成やオリジナルのビジネスゲームをコミュニケーションを取りながら行うことで、打ち解けた関係が築けます。ただ、ビジネスゲームだけだと学生のインターンシップ参加の満足度は得られにくいので、グループディスカッションなどのグループワークや就業型など、他の形式の内容と組み合わせると良いでしょう。
4.就業型
学生に実際に働く機会を与える方法です。社員と同じ職場内で働くことによって、学生は職場環境や業務内容を理解でき、企業側は学生への指導を行うことによって社員の成長や課題改善などの効果を得ることができます。
5.講義・レクチャー
会社説明の講義やセミナー、レクチャー型のインターンシップは、「1day/2day」インターンシップで良く行われます。インターンシップという名前ですが、会社説明会と同じような方法で実施できるので、企業側には負担が少ない方法といえます。
③インターンシップの期間を決めよう
目的が決まったら、目的にふさわしい実施期間を設けましょう。
例えば自社で早期離職が課題となっている場合、しっかりと入社前に適性を見極める必要があるので、長期インターンシップが効果を出しやすいでしょう。また採用総数が少なくて採用ノルマ達成が課題の場合は、多くの学生が気軽に参加できる短期インターンシップがオススメです。
(1)短期インターンシップ
短期インターンシップとは、1日~1か月程度の期間のインターンシップのことです。1day/2dayインターンシップは企業の目的が学生との接点をもつことであり、学生側の目的は企業研究となり、研修や育成はできないのが現状です。
1日のスケジュールとしては、仕事の体験が2~3時間程度で、他に説明会や社員との座談会などが行われることが多いです。
短期間であるため、気軽に参加してもらいやすく、集客がしやすいというメリットがあります。
(2)長期インターンシップ
長期インターンシップとは、1カ月以上、数か月や年単位で実施するインターンシップのことです。ほとんどの場合、給与が支払われ、入社後に即戦力として活用するための育成を目的としています。
内定後の入社前研修として長期インターンシップを行う企業も多く、インターンシップ中に社員との人間関係の構築ができるほか、業務内容や仕事の基本も身についているため、優秀な即戦力を採用することができます。今は新型コロナウイルスの影響により、オンラインでの研修もよく見られますが、入社後に全国の支店などに散らばってしまう同期の顔がわかり、入社後に違和感なく働けることにも一役買っているようです。
また、入社後のミスマッチを防ぐという意味でも、大変有効です。
④関係者のスケジュールを調整しよう
日数が決まったら、社内でインターンシップの実施時期について、スケジュール調整をしましょう。また、現場または採用担当者の負担は大きくなるため、インターンシップは会社全体で取り組むという姿勢が大切だという事をきちんと社内で確認し、対策を講じる必要があります。
⑤募集方法を決めよう
自社のホームページの他、就職情報サイトでの公募や大学のキャリアセンターを通しての学内告知、また大学の研究室からの直接受け入れなどの方法があります。ターゲット学生に応じて検討しましょう。
募集時期については制限がありませんので、いつでもできます。ただ、学生が参加しやすいスケジュールを考える必要はあります。例えば短期の1週間のインターンシップを行うとなると、やはり学生の夏季休暇、冬期休暇など長期休み中に行うと良いでしょう。
⑥募集&選考を行おう
計画した告知や公募手段、選考方法に準じた活動となります。選考の方法は企業により設定されており基準には幅があります。一般的には、書類審査やWebテスト、グループディスカッション、面接などがあります。スキルや能力よりも、価値観や行動特性をとらえるための審査と考えられています。
【インターンシップ実施時の注意点】
無給か有給かをまず決める必要があります。有給であれば、いくら支払うのかも大事ですが、最低賃金を下回るような給与にならないように注意が必要です。
また、学生が機密情報や顧客情報などにアクセスできる環境で業務をする場合、個人情報も含めた情報漏洩が心配されます。学生とは事前に誓約書を交わすなど、万が一の対策も考えておく必要があります。
また、インターンシップをしても、その後学生を選考までフォローできずにほったらかしにしていると、採用につながりません。定期的な学生へのフォローは大事です。
【まとめ】
今回は、インターンシップの進め方・募集の仕方・準備などについて紹介しました。
インターンシップ制度は、早くに優秀な人材と出会える大きなチャンスです。インターンシップ初心者の企業は、ぜひ自社に適したインターンシップの仕方で実施してみましょう。
学生の多くはインターンシップの経験を通して、その企業への理解、志望度が高くなったとの話も、秋田県内高等学校の先生より聞きます。
ポイントは、「インターンシップは会社全体で取り組むという姿勢」です。
インターンシップをぜひ効果的に実施し、一人でも多くの学生に自社の魅力を知ってもらえるようにしましょう。